前回に引き続き、キリストの意味についての解説です。
8.イエスは、イスラエルの王ではない
これまでのメルマガの中で、旧約聖書ではイスラエルの王となった人物が、
メシア、つまりキリストと呼ばれているということを解説してきました。
実は新約聖書も、本質的には旧約時代と変わりません。
つまり、イスラエルの王に対して、キリストという称号が与えられているわけです。
ですが福音書のどこを読んでも、イエスがイスラエルの王として即位したという記述は、
見当たりません。
確かにマタイによる福音書には、イエスが生まれた時、東方から博士たち(恐らく占星術の学者)が、当時ユダヤを統治していたヘロデ大王のもとを訪ねるという記述はあります。
「ユダヤ人の王としてお生まれになったかたは、どこにおられますか。私たちは東の方でその星を見たので、その方を拝みにきました。」
(マタイによる福音書2章2節)
彼らはその王を拝みに、はるばる東方から来たのでした。
ですが、そもそもイエスはヘロデ王の家系ではありません。
新約聖書によればイエスはベツレヘムで生まれましたが、その後ガリラヤ地方のナザレという町に移り住み、
それゆえ人々からは、「ナザレのイエス」と呼ばれることになったといいます。
もっとも、イエスが伝道を行っていた頃、彼の影響力に期待した群衆が、イエスを自分たちの王にしようとしたという記述はあります。
「イエスは人々がきて、自分をとらえて王にしようとしていると知って、ただひとり、また山に退かれた。」
(ヨハネによる福音書6章15節)
しかし、彼にはそのような気はなかったようです。
これを読むとイエスには、イスラエルの王として統治したいという、
そのような意志はなかったように思えます。
つまり、旧約聖書でキリストと呼ばれる条件のひとつ、イスラエルの王であったという点は、
彼には当てはまらないということになりますね。
次回に続きます。
(2024年2月21日まぐまぐ!にて配信)
(このブログでは、日本聖書協会発行の口語訳を引用しています。
聖書 口語訳: ©日本聖書協会 Japan Bible Society
1954,1955,1975,1984,2002)