前回に引き続き、伝道の書について解説をします。
5.伝道の書の末尾
今回までのメルマガでは、旧約聖書の伝道の書の解説をしてきました。
いかがでしたか?
伝道の書は次のような言葉で、締めくくられています。
「事の帰する所は、すべて言われた。すなわち、神を恐れ、その命令を守れ。これはすべての人の本分である。」
(伝道の書12章13節)
そして、次のように続きます。
「神はすべてのわざ、ならびにすべての隠れた事を善悪ともにさばかれるからである。」
(伝道の書12章14節)
これまで解説をしてきたとおり、この伝道の書の著者は、様々な事業を起こし、財産を築き、また賢かったので、学問にも熱心に取り組んできました。
また、ハーレムのような生活をしていたとも想像することができます。
しかし、なに不自由ない生活を送っていたはずの彼が、最後に気づいた、人生で最も大切なことは、
「神を恐れ、その命令を守ること。それが人間の本分である。」
ということでした。
今日、この伝道の書は、旧約聖書の正典に収録されています。
正典というのは、信仰生活の基準となる書物として、公認されてきた書物のことです。
ですがこの伝道の書は、ユダヤ教の正典として認められるのが、
遅れた文書の一つでした。
それはもしかすると、この伝道の書の、厭世的で、懐疑的で、冷笑的な内容が、
聖書として収録するのに、ふさわしくないと考えられていたのかもしれません。
ですがよく読んでみると、なぜこの文書が正典に選ばれたのか、
その理由もよくわかるのではないでしょうか?
伝道の書の著者は、この世に無常を感じる、懐疑的で、厭世的な人物です。
にもかかわらず神の存在と、正しく生きることへの意義を見失うことのなかったこの「伝道の書」から、
私達が学べることは、少なくないのではないでしょうか?
(次回の記事は、こちら)
(2023年11月1日まぐまぐ!にて配信)
(このブログでは、日本聖書協会発行の口語訳を引用しています。
聖書 口語訳: ©日本聖書協会 Japan Bible Society
1954,1955,1975,1984,2002)