前回に引き続き、伝道の書について解説をします。
3.伝道者の感じた、心の空しさ
さてこの伝道の書の著者は、さまざまな事業をなし、富を蓄え、多くの奴隷をもち、また女性にも恵まれていました。
にもかかわらず、彼の心はそれによって満足はしませんでした。
一体なぜでしょうか?
彼は、次のように言います。
「そこで、わたしはわが手のなしたすべての事、およびそれをなすに要した労苦を顧みたとき、見よ、皆、空であって、風を捕らえるようなものであった。」
(伝道の書2章11節)
また彼は知恵のある人物でしたが、それにも飽き足りませんでした。
「それは知恵が多ければ悩みが多く、知識を増す者は憂いを増すからである。」
(伝道の書1章18節)
たとえ知恵があっても、それによって余計な悩みが増えることもあるということでしょうか。
4.伝道者の見たこの世の有様
このように伝道の書の著者は、富や財産にあまり関心がないように思えます。
なぜ彼は富や財産といったものに、魅力を感じないのでしょうか?
「財産が増せば、これを食う者も増す。その持ち主は目にそれを見るだけで、なんの益があるか。」
(伝道の書5章11節)
たとえば、お金持ちが大宴会を開いたとします。けれども、人間が一度に食べられる量など、たかが知れています。
だから、お金持ちが大宴会を催しても、本人は少ししか食べられず、あとは他人の食べるのをただ眺めているだけ。
それではなんの意味もない。彼はそう感じます。
それに、
「金銭を好む者は金銭をもって満足しない。富を好む者は富を得て満足しない。これもまた空である。」
(伝道の書5章10節)
だから彼はこの世の富、財産を持っていても、どこか空しさを感じるのです。
次回に続きます。
(2023年10月22日まぐまぐ!にて配信)
(このブログでは、日本聖書協会発行の口語訳を引用しています。
聖書 口語訳: ©日本聖書協会 Japan Bible Society
1954,1955,1975,1984,2002)