前回に引き続き、伝道の書について解説をします。
5.伝道者の得た結論とは?
この伝道の書の著者は、知恵のある人でした。
そして、財産にも恵まれていたようです。
しかし、そんな自身の境遇にも、結局満足できませんでした。
また、この世界の有様にも、やはり空しさを感じます。
なぜならこの世界は善人が栄え、悪人が滅びるというわけでもない。
そんな世界だからです。
そこで彼は、これまでの経験から問いかけます。
人間にとって、一体何が幸福なのだろうか?
そして、彼は次のように結論付けます。
「見よ、わたしが見たところの善かつ美なる事は、神から賜った短い一生の間、食い、飲み、かつ日の下で労するすべての労苦によって、楽しみを得る事である。これがその分だからである。」
(伝道の書5章18節)
そして、次のようにも言います。
「日の下で神から賜ったあなたの空なる命の日の間、あなたはその愛する妻と共に楽しく暮らすがよい。これはあなたが世にあってうける分、あなたが日の下で労する労苦によって得るものだからである。」
(伝道の書9章9節)
続けて、こうも言っています。
「あなたは行って、喜びをもってあなたのパンを食べ、楽しい心をもってあなたの酒を飲むがよい。」
(伝道の書9章7節)
これが、彼の到達した結論でした。
いかがでしょうか?
彼はこう言います。人間にとって最も幸福な人生は、財産や名声、あるいは権力を追求するような人生ではない。
いくら財産を築いても、いつ崩れ去るかわからない。
権力に居座ったとしても、いつそこから転落するかもわからない。
名声だって同様に、そんな当てにはならない。
そういったものを追求することに、あくせくする人生は、空しい。
彼は、そのように感じます。
ではどのような生活が、幸福をもたらすのか?
家族や配偶者、あるいは友人がいて、彼らとすごす日常。
つつましく、しかし自身の人生に満足している生活。
そんな人生こそ、本当は一番幸福なのではないか。
彼は、そのように考えます。
気のおけない仲間との、そんな平凡な日々にこそ、最も幸福な瞬間がある。
彼は、そう言っているようです。
「このような人は自分の生きる日のことを多く思わない。神は喜びをもって彼の心を満たされるからである。」
(伝道の書5章20節)
これが、彼の得た結論でした。
次回に続きます。
(2023年10月29日まぐまぐ!にて配信)
(このブログでは、日本聖書協会発行の口語訳を引用しています。
聖書 口語訳: ©日本聖書協会 Japan Bible Society
1954,1955,1975,1984,2002)