前回に引き続き、伝道の書について解説をします。
5.伝道者の見た世界(2)
さて、彼はこの世の富や知恵に、対して期待はしません。
またこの世の有様にも、空しさを感じます。
一体何故でしょうか?
なぜなら、この世界は、善人が必ずしも勝つのではなく、しばしばその逆が起こることがあるからです。
彼は、次のように言っています。
「地の上に空な事が行われている。すなわち、義人であって、悪人に臨むべき事が、その身に臨む者がある。また、悪人であって、義人に臨むべき事が、その身に臨む者がある。わたしは言った、これもまた空であると。」
(伝道の書8章14節)
このようにこの世は、正しい人間が必ずしも幸福になれるわけではありません。
逆もまた然りです。
そして、彼は社会正義にも、たいして期待はしていません。
「わたしはまた、日の下に行われるすべてのしえたげを見た。見よ、しえたげられる者の涙を。彼らを慰める者はない。しえたげる者の手には権力がある。しかし彼らを慰める者はいない。」
(伝道の書4章1節)
更に、彼は未来にもたいして期待はしません。
「愚者は言葉を多くする、しかし人はだれも後に起こることを知らない。
だれがその身の後に起こる事を、告げることができようか。」
(伝道の書10章14節)
人間はいくら努力しても、災難がいつ巡ってこないとも限りません。なぜなら、
「しかし時と災難はすべての人に臨む。」
(伝道の書9章11節後半)
からです。
伝道の書を読むと、この伝道者という人物は、この世の出来事を、なんでも皮肉り、否定し、嘲笑しているかのように感じます。
では果たして、この伝道者は何が言いたかったのでしょうか?
そして、この伝道者が行き着いた結論とは、一体なんだったのでしょうか?
次回に続きます。
(2023年10月25日まぐまぐ!にて配信)
(このブログでは、日本聖書協会発行の口語訳を引用しています。
聖書 口語訳: ©日本聖書協会 Japan Bible Society
1954,1955,1975,1984,2002)