7.十戒のもつニュアンス
ここまで十戒について解説をしてきましたが、いかがだったでしょうか?
ここでは最後に十戒についてひとつ指摘しておきたいことを書きます。
それは、十戒のもつニュアンスについてです。
十戒は旧約聖書に書かれた戒律ですが、この旧約聖書はもともとヘブライ語という言葉で書かれています。そして十戒の原文には、ある興味深い点があります。
それは、十戒の「〜してはならない」という表現は、通常のヘブライ語の表現より、強い言葉が使われているという点です。
たとえば、
「あなたは殺してはならない。」
(出エジプト記20章13節)
という箇所を見てみましょう。この箇所は日本語に直訳すれば、「あなたは決して殺さない。」という意味になります。
「決して〜しない」という、強い表現が使われています。
なぜそのような表現なのでしょうか?
それは、この戒律の本来のニュアンスは、「あなたは私の愛する民であるから、殺人などは決してしないし、するはずがない。どうしてするだろうか。」というものだからです。
これは命令というよりも、むしろ神の自身の選んだ民に対する、愛をもった語りかけです。
もし神からこんな風に信頼されてしまえば、もはや罪を犯すことなどできなくなってしまう。
そのような神の自身が選んだ民に対する、信頼と愛を表現したのがこの十戒だといえます。
戒律というものは、えてして「〜するな」、「〜しろ」という、堅苦しい禁止事項が並んだものだとみなされがちです。
十戒も、その例外ではありません。
しかしその十戒も、命令というよりも、むしろ自身が選んだ民に対する、神からの信頼をもった愛の語りかけだとみなせば、それまでとは異なる観点からみることができるようになるのではないでしょうか?
次回は、キリストの再臨について解説します。
(2023年8月23日まぐまぐ!にて配信)
(このブログでは、日本聖書協会発行の口語訳を引用しています。
聖書 口語訳: ©日本聖書協会 Japan Bible Society
1954,1955,1975,1984,2002)