前回に引き続き、「人の子」について解説します。
2.旧約聖書の中の「人の子」
さて、前回イエスの言う「人の子」という言葉は、自分自身を指す当時の一般的な言葉だったと解説しました。
しかし、イエスの言う「人の子」という言葉は、それだけにとどまらないようです。
前回はマルコによる福音書9章31節を引用しましたが、この箇所でイエスが「人の子」と言ってるときに、イエスの念頭にあったのは、旧約聖書にダニエル書にある、次のような箇所だったと思います。
「わたしはまた夜の幻のうちに見ていると、
見よ、人の子のような者が、
天の雲に乗ってきて、
日の老いたる者のもとに来ると、
その前に導かれた。
彼に主権と光栄と国とを賜い、
諸民、諸族、諸国語の者を彼に仕えさせた。
その主権は永遠の主権であって、
なくなることがなく、
その国は滅びることがない。」
(ダニエル諸7章13節ー14節)
これは旧約聖書の中のダニエルという人物が、夢の中で見た幻を語る場面です。
旧約聖書には世の終わりに、ここで描かれたような、王でありまた審判者でもある、そのような人物が現れると語っています。そして「人の子」というのは、そのような人物を指すことばでした。
このマルコの箇所で、イエスは「人の子」について語った時、かれは自分自身をその「人の子」と同一視していたことがうかがえます。
そしてこの「人の子」は、イザヤ書の53章に描かれているような「苦難のしもべ」のような存在であるということも、あらかじめ予告したかったのではないかとも、思えます。
(次回の記事は、こちら)
(2023年7月9日まぐまぐ!にて配信)
(このブログでは、日本聖書協会発行の口語訳を引用しています。
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1954,1955,1975,1984,2002)