聖書の読み方

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ヤコブの手紙の意義(3)

 前回に引き続き、ヤコブの手紙について解説をします。

 

 4.パウロは、行いを否定していない
 前回解説したようにヤコブの手紙は、キリスト教の実践面に焦点をあてた書簡です。
 ですが、これは信仰を強調する使徒パウロの教えとは、一見矛盾します。
 これが、前回までの内容です。
確かにヤコブパウロの主張は、一見食い違っているように見えます。
 しかし実際は矛盾していない、と私は思います。
なぜならそもそもパウロは、善行が必要ないとは全く言っていないからです。
 前回引用した「ローマ人への手紙」の中で、パウロは次のようにも言っています。
 
 「すると、信仰のゆえに、わたしたちは律法を無効にするのであるか。断じてそうではない。かえって、それによって律法を確立するのである。」
 (ローマ人への手紙3章31節)

 

 ここで彼は、信仰を持つことは、律法を無効にするのではないといいます。
むしろ、信仰によって律法を確立する、彼はそう言います。
 つまり信仰を持つことは、律法(にある正しい行い)を不要にするのではなく、
むしろ信仰を持つことによって、(義務感ではなく)本心から律法=善行を行うようになっていく、
 彼はそのように主張します。
これが、律法を確立するということです。


 逆に言えば、そのような正しく生きようと思えない信仰というのは、
実際は信仰とは言えない。
 それが、パウロの主張です。
これは、ヤコブの主張と全く矛盾はしません。
 言ってみれば、パウロは信仰と言うものを強調するのに対し、
ヤコブは、信仰を持った後の行いを強調していると言えます。
 これは、どちらの観点も重要です。
 
 ですのでヤコブの手紙は、既に信仰をもっているクリスチャンにとって、特に重要な書簡です。
本当に、私達クリスチャンは、正しい行いを行っているのか?
 そうであれば、もうすこし教会も栄えているのではないか?
このことを改めて吟味することも、重要なのではないでしょうか?

 そう考えてみれば、このヤコブの手紙が、新約聖書に収録されている理由も、
 うなずけるのではないでしょうか?

 

 (次回の記事は、こちら

 

(2023年11月22日まぐまぐ!にて配信)

 

(このブログでは、日本聖書協会発行の口語訳を引用しています。

聖書 口語訳: ©日本聖書協会 Japan Bible Society

        1954,1955,1975,1984,2002)